雑誌編集者を目指して、上京。
トラの穴で編集プロダクション生活をスタートさせたばかりの「のんちゃん」(23歳女子)に贈る
編プロ・トラの穴的 おこごと、仕事のコツ、ラクの仕方と、社会人的たしなみと。
順不同でまいります。
つまみ読み、どうぞ。
宝物はずばり、スタッフです。
一緒に仕事をしてくれるクリエーターたち。
デザイナー、カメラマン、イラストレーター、スタイリスト、ヘアメイク、モデル、ライター……
彼らなくして、我々は成り立ちません。
彼らがいなければ、我々は丸裸の能なしです。
編集者ひとりでは雑誌をつくることは決してできません。
あなたの思うものを、思う以上のかたちにしてくれるのが、クリエーターです。
ちょっと乱暴ないい方をすると
編集者の究極の仕事は、彼らのために動くこと、といっても過言ではないほどです。
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あなたが彼らをリスペクトすることが、いちばん大事。
すべきことはそこから見えてくるでしょう。
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まず、彼らが動きやすいように段取りすること。
彼らが120%自由に動けることを目指して、編集者は仕込みをすべきです。
デザイナーになら、やりたいことがきちんと伝えられるサムネールを仕上げて渡す。
カメラマンになら、いい環境を整え、情報を開示し、撮影の用意を怠らないこと。
彼らがより自由に動けるように仕込み、現場で立ち回ること。
撮影現場であなたがやるべきはカメラマンのフォローです。
たいていは取材相手があることですから、ややこしいことはすべて自分が引き受けるつもりで。
イラストレーターなら、描いてほしいイメージをきちんと伝えること。
誌面の状況、イラストの大きさ、周囲の色、場合によっては細かな資料も必要です。
彼らが120%自由に仕事ができたら、それはそのままいい作品(誌面)につながっていくでしょう。
だから、彼らの仕事のクリエイティビティのために自分が動くことを
惜しんではいけません。それが編集者の大切な仕事です。
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仕上がりを受け取ったら、まず自分の感想を伝えること。
上の人がどう判断しようが関係ありません。いいと思ったらいいと相手に伝えるのが大事。
彼らはあなたと仕事をしたのですから、あなたの感想がまず聞きたいはず。
もちろん「あれ、こんなはずじゃなかった」ときは、その旨きちんとお伝えしますが
NGを出すときは、十中八九こちらにも責任があるときです。
なにか、伝え方を間違えていなかったかをまず省みるべき。気をつけて。
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スタッフクレジットには細心の注意を払うこと。
名前のヌケ、表記間違いはもってのほかです。
編集のギャランティは広告に比べて驚くほど安いのです(そして我々のギャラも安い。残念ですが)。
その代わりにあなたは
世の中のすべての人に、お願いしたクリエーターの名を知らしめる義務があります。
クレジット表記は安いギャランティの代わりとして、
あなたが責任をもって確認しないといけないことです。
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わたしが若い頃に、初めて上司に噛みついて離れなかったのも、クレジット問題でした。
花博の催事広報誌をつくったときに、上司から「ノークレジットにする」と言われたのです。
会社間の問題があったようでした。
でも、こちらはクリエーターへの責任があります。
「抜くなら辞める」くらいで噛みついたかと思います。あれは、編集者半年目のことかな。
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編集者が守らなくてはならないのもクリエーターです。
少ないギャランティだけれども、滞りなく支払うように細心する。
もしもクリエーターの立場が悪くなるようなことがあれば、フォローに入る。
仲裁する。
基本です。
絶対に守ってあげてください。おそらくは、その気持ちが大事なんだな。
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そして自分のとっておきのパートナーを見つけることです。
自分のイメージするもの以上仕上げるためには、この仕事ならこの人にお願いすべき……
それがパートナーです。
かっこいい本にしたいからこのデザイナーさん、ユルい本ならあの方かな、とか。
女の子を空気感ごと撮影してほしいならあの人で
花嫁さんをきれいに現場で撮影するならあの人、
的確に商品写真をお願いするあの人、
料理を最高においしそうに撮ってほしいからあの人……
スタイリストも、ヘアメイクも同じです。
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今はまだ、年上の人ばかりで気後れするかもしれません。
けれど、今のうちから大御所とおつきあいできるのは、むしろ貴重な体験。
おつきあいを楽しんでください。かわいがってもらえるように。
いつかあなたがクライアントになる日がくるのですから。
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自分の若い頃を振り返ると、
同年代の駆け出しのカメラマンで腕のいい方を、貪欲に発掘していました。
で、一緒に成長してきたと思います。
この人の写真が好きだと思ったら、とにかく世の人にアピールしたかったし
大きな写真を撮ってもらうように仕掛けたし
クレジットの級数を上げるように努力しました。
そのへんは、互いにもちつ、もたれつ。
写真に限らず、いいもの・才能を見抜くのも、編集者として大切なことだと思います。
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その目を養うためには、とにかくいいものをたくさん見ることです。
「写真がわからない」のであれば、とりあえず
「コマーシャル・フォト」あたりを立ち読みしてみてはどうでしょう。
イラストなら「イラストレーションファイル」。いずれも玄光社刊。
ヒントがたくさん隠れています。
またクリエーター自身に教えていただくことも多かったです。
ま、今もずっといろいろ教わっているわけですが。
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わたしも日々いろいろ情報を仕入れるわけですよ。
のんちゃんたちのみずみずしい感性に、ひょいと追い越されないように。
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