いなくてもいるということ

2014年1月12日 (日)

宵の口、ふらりと入った中野の路地にあるタイ料理店。
店には初老の日本人のご主人がおひとりだけ。
客は私たちのほかにはいませんでした。

「座ってください」と通されたテーブルの横の壁に
タイ人らしき女性の写真がたくさん貼られていました。

いろんな年代のタイの女性たちで、どれもすてきな笑顔で笑っています。
ん、待てよ。
たぶん、どの女性も同じ人です。
いちばん上に「HAPPY」と手書きの文字があるポラロイド写真は
60才くらいに見えました。
どの写真もとてもしあわせそうなんだけど
「HAPPY」と書かれたその写真の笑顔だけは、ちょっと力なく見えました。
たぶん、もうご病気だったんじゃないのかな……。

このタイ人の女性はご主人の奥さんで
きっと亡くなっていらっしゃるんだろうなと思いました。


料理はどれもおいしくて、お行儀がよくて親しみのある味でした。
とくに生春巻き。
卵焼きと海老とイカが巻いてあって、はじめての取り合わせでした。
ゴマだれでいただく家庭的な味わいです。とてもおいしい。
奥さんのとっておきレシピが今もこの店で息づいている感じです。
というか、奥さん、ここにいるよね。

お腹もいっぱい、たいへんしあわせな気分になりました。
「どのお料理もおいしいです!」と伝えたら、「それはよかった」とご主人もうれしそう。
連れが席を立ったとき、ご主人に
「この写真の女性が奥様ですか?」と伺ったら
「そう。5年前に亡くなったの」とおっしゃいました。
「大丈夫、ここにちゃんとおいでですよ」と申し上げたら
「うん、9年一緒に店をやっていたからね」とご主人。少しうれしそうに見えました。

「すごくおいしいおすすめの料理があるんだ。手羽先を甘辛く煮たやつなんだけど」
パッタイいただいたあとでしたが、いただきました。
きっと奥さんご自慢の料理ですもの。

すでにお腹いっぱいでも、ぺろっと平らげてしまうほど
おいしい手羽先でした(「山ちゃん」仕込みで、手羽先食べるのはお手のもの♪)。
いただけてラッキーでした。
次いったら、きっと先に頼もう!


奥さんもそれはうれしそうでした。

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