それが事実であるがゆえに、ニュースは最高におもしろい。
そこからドラマを読み取るのは、あなたなのかもしれません。
宵の口、ふらりと入った中野の路地にあるタイ料理店。
店には初老の日本人のご主人がおひとりだけ。
客は私たちのほかにはいませんでした。
「座ってください」と通されたテーブルの横の壁に
タイ人らしき女性の写真がたくさん貼られていました。
いろんな年代のタイの女性たちで、どれもすてきな笑顔で笑っています。
ん、待てよ。
たぶん、どの女性も同じ人です。
いちばん上に「HAPPY」と手書きの文字があるポラロイド写真は
60才くらいに見えました。
どの写真もとてもしあわせそうなんだけど
「HAPPY」と書かれたその写真の笑顔だけは、ちょっと力なく見えました。
たぶん、もうご病気だったんじゃないのかな……。
このタイ人の女性はご主人の奥さんで
きっと亡くなっていらっしゃるんだろうなと思いました。
料理はどれもおいしくて、お行儀がよくて親しみのある味でした。
とくに生春巻き。
卵焼きと海老とイカが巻いてあって、はじめての取り合わせでした。
ゴマだれでいただく家庭的な味わいです。とてもおいしい。
奥さんのとっておきレシピが今もこの店で息づいている感じです。
というか、奥さん、ここにいるよね。
お腹もいっぱい、たいへんしあわせな気分になりました。
「どのお料理もおいしいです!」と伝えたら、「それはよかった」とご主人もうれしそう。
連れが席を立ったとき、ご主人に
「この写真の女性が奥様ですか?」と伺ったら
「そう。5年前に亡くなったの」とおっしゃいました。
「大丈夫、ここにちゃんとおいでですよ」と申し上げたら
「うん、9年一緒に店をやっていたからね」とご主人。少しうれしそうに見えました。
「すごくおいしいおすすめの料理があるんだ。手羽先を甘辛く煮たやつなんだけど」
パッタイいただいたあとでしたが、いただきました。
きっと奥さんご自慢の料理ですもの。
すでにお腹いっぱいでも、ぺろっと平らげてしまうほど
おいしい手羽先でした(「山ちゃん」仕込みで、手羽先食べるのはお手のもの♪)。
いただけてラッキーでした。
次いったら、きっと先に頼もう!
奥さんもそれはうれしそうでした。
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