それが事実であるがゆえに、ニュースは最高におもしろい。
そこからドラマを読み取るのは、あなたなのかもしれません。
若年性アルツハイマーの疑いあり、と言われて、
脳波の精密検査を受けてから、もうかれこれ3年ほど経つかしら。
記憶がどんどん抜けていく。
時間の感覚が、5分の感覚がわからず、不安でたまらない。
電話で話をしている相手がだれだかわからなくなる。
ちょうど沖縄の出張前で、時間の感覚がわからないから飛行機に乗れない
朝起きられなくて怖いと半泣きになっていたら
社長が「それなら朝からタクシーで空港に行け。
たとえ寝坊してもタクシーが起こしてくれる」と言うので(やさしいんだか、鬼なんだか)
お言葉に甘えて自宅から羽田まで早朝タクシーを使った。
新大阪まで往復しておつりがくるくらいのお金がかかった。
飛行機の待ち時間は地獄のようで、わたしはたぶん10秒おきに時計を眺めて
乗り過ごさないかどうかドキドキしていた。
こんなに神経質になっているのに、やっぱり遅れるのだ……。
沖縄のホテルでの取材だったが、先様の話す言葉がうまく理解できないので
とにかくメモをとりまくっていた。かなりへんなメモ。
部屋に戻ってから、メモと資料を見ながらその日のレポートを、A4で3枚くらいはびっちり書いた。
不安だったので書きまくった。
いつもなら頭の中にどんどん貯めるのだけど(20件はいつも貯めていた)、もはやそれができない。
かなりきつい体感だった。私、どうなるんだろう?
東京に戻ってから大学病院の脳神経科(だったっけ?)を受診。
CTを撮影すると、「たしかに脳に萎縮が見られるようだ」。
アルツハイマー用診断テストをするも結果はボロボロ。
「これを10秒見てください。はい、中になにが入っていましたか?」
と言われても、そんなのわかるか状態。
数字を覚えろといわれても、まったくわからない。計算は壊滅状態。
唯一、言葉……「ねこ」「さくら」「でんしゃ」は覚えられた。
医師はとても親切で、「脳の権威を紹介しますから、そこで精密検査してください」と紹介所を書いてくれた。
事務所に戻ってから、これはスタッフにもフォローしてもらわないとまずいと思い
みんなに様子を話した。「というわけで、みんな、少しフォローを頼むよ」
すると、Sがひと言、「マリさん、ちゃんと寝てみたらどうですか? マリさん眠らないじゃないですか」
なんだかぴーんときて、「そうだ、眠ってみよう」と素直に思った。
それまでの仕事の仕方で、睡眠3時間スタイルが続いていたし
しかも布団で寝ないし(家に帰ってお膳で仕事をして、そのままずるっとそこで眠って起きて活動していた)、休みもないし、
3時間も眠らないようなこともしょっちゅうやっていた。
あのとき、6時間、いや7時間睡眠を、しかも布団で横になってやってみた。
すると、みるみるうちに記憶が回復して、2,3日ですっかり元通りになってしまったのだ。
これには驚いた。なんだ? ただの睡眠不足だったのか?
眠るだけで記憶できるようになるのか?
それから毎日気をつけるようにした。
極力布団で、ちゃんと眠るように心がけて5年が経つ。
もう記憶障害なんてヤだものね。
ひと月後、脳の権威のもとで精密検査は受けたときは、すっかり元通りに戻っていた。
権威は、「なにも異常ありませんけど?」と、MRIの結果を見て少しフキゲンに言った。
そりゃそうだろう。アルツハイマーテストも、ほぼパーフェクトにできたし(しかも前とツールがいっしょだった)、
傍目に私は健康そうだったと思う。
「あの、睡眠不足で記憶に障害が出ることって、あるんでしょうか?」と訊いてみた。
「当たり前です。人の記憶は、眠って定着するようにできている」と、権威がフキゲンに教えてくれた。
眠らないと記憶は定着しないらしい。
それまで3時間とか1時間半とかでふつうに暮らせていたのに、
突然同じことができなくなる。
つまり、年をとり、肉体が衰えるって、こういうことなんだろうと思った。
自分の「老い」を悟った瞬間だった。心臓が先に止まらなくて幸いなことだったと思う。
それなら私も、肉体にあわせてレベルアップしていかなきゃ。
眠らないともたない、肉体のパフォーマンスと呼吸をあわせるように、
肉体をいたわって、慈しみながら、大事にして暮らさないとな。
以降、できるだけ4時間半は眠るようにするし、眠れるときはちゃんと6時間以上眠るようにしている。
おかげさまで記憶は定着したままで、以降深刻なトラブルはない。
眠るって大事。眠る間にいろいろなものを、からだは静かに修復するんだと思う。
たぶん、眠る時間は深い深いしあわせを紡ぐ時間なんだよなぁ。
本当は成長ホルモン(←この名前よくないよなぁ)の出る、夜10時~深夜2時に
眠れたらと思うけど、それは少々ムリがあるので実現していない。
とにもかくにも、睡眠不足をあなどってはいけません。
「そんなに眠る時間がないわよ、もダメ」(ほんとに死んじゃいます。仲のいい友人に、睡眠不足で、文字通り死にかけたのがふたりいます)。
肉体の声に耳を傾けて、その声を聴く。
うまく気づいてあげることがなによりだいじだと思います。
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