睡眠不足と記憶障害

2013年3月 8日 (金)

若年性アルツハイマーの疑いあり、と言われて、
脳波の精密検査を受けてから、もうかれこれ3年ほど経つかしら。

記憶がどんどん抜けていく。
時間の感覚が、5分の感覚がわからず、不安でたまらない。
電話で話をしている相手がだれだかわからなくなる。
ちょうど沖縄の出張前で、時間の感覚がわからないから飛行機に乗れない
朝起きられなくて怖いと半泣きになっていたら
社長が「それなら朝からタクシーで空港に行け。
たとえ寝坊してもタクシーが起こしてくれる」と言うので(やさしいんだか、鬼なんだか)
お言葉に甘えて自宅から羽田まで早朝タクシーを使った。
新大阪まで往復しておつりがくるくらいのお金がかかった。

飛行機の待ち時間は地獄のようで、わたしはたぶん10秒おきに時計を眺めて
乗り過ごさないかどうかドキドキしていた。
こんなに神経質になっているのに、やっぱり遅れるのだ……。
沖縄のホテルでの取材だったが、先様の話す言葉がうまく理解できないので
とにかくメモをとりまくっていた。かなりへんなメモ。
部屋に戻ってから、メモと資料を見ながらその日のレポートを、A4で3枚くらいはびっちり書いた。
不安だったので書きまくった。
いつもなら頭の中にどんどん貯めるのだけど(20件はいつも貯めていた)、もはやそれができない。
かなりきつい体感だった。私、どうなるんだろう?

東京に戻ってから大学病院の脳神経科(だったっけ?)を受診。
CTを撮影すると、「たしかに脳に萎縮が見られるようだ」。
アルツハイマー用診断テストをするも結果はボロボロ。
「これを10秒見てください。はい、中になにが入っていましたか?」
と言われても、そんなのわかるか状態。
数字を覚えろといわれても、まったくわからない。計算は壊滅状態。
唯一、言葉……「ねこ」「さくら」「でんしゃ」は覚えられた。
医師はとても親切で、「脳の権威を紹介しますから、そこで精密検査してください」と紹介所を書いてくれた。

事務所に戻ってから、これはスタッフにもフォローしてもらわないとまずいと思い
みんなに様子を話した。「というわけで、みんな、少しフォローを頼むよ」
すると、Sがひと言、「マリさん、ちゃんと寝てみたらどうですか? マリさん眠らないじゃないですか」
なんだかぴーんときて、「そうだ、眠ってみよう」と素直に思った。
それまでの仕事の仕方で、睡眠3時間スタイルが続いていたし
しかも布団で寝ないし(家に帰ってお膳で仕事をして、そのままずるっとそこで眠って起きて活動していた)、休みもないし、
3時間も眠らないようなこともしょっちゅうやっていた。


あのとき、6時間、いや7時間睡眠を、しかも布団で横になってやってみた。
すると、みるみるうちに記憶が回復して、2,3日ですっかり元通りになってしまったのだ。
これには驚いた。なんだ? ただの睡眠不足だったのか?
眠るだけで記憶できるようになるのか?
それから毎日気をつけるようにした。
極力布団で、ちゃんと眠るように心がけて5年が経つ。
もう記憶障害なんてヤだものね。


ひと月後、脳の権威のもとで精密検査は受けたときは、すっかり元通りに戻っていた。
権威は、「なにも異常ありませんけど?」と、MRIの結果を見て少しフキゲンに言った。
そりゃそうだろう。アルツハイマーテストも、ほぼパーフェクトにできたし(しかも前とツールがいっしょだった)、
傍目に私は健康そうだったと思う。
「あの、睡眠不足で記憶に障害が出ることって、あるんでしょうか?」と訊いてみた。
「当たり前です。人の記憶は、眠って定着するようにできている」と、権威がフキゲンに教えてくれた。


眠らないと記憶は定着しないらしい。
それまで3時間とか1時間半とかでふつうに暮らせていたのに、
突然同じことができなくなる。
つまり、年をとり、肉体が衰えるって、こういうことなんだろうと思った。
自分の「老い」を悟った瞬間だった。心臓が先に止まらなくて幸いなことだったと思う。
それなら私も、肉体にあわせてレベルアップしていかなきゃ。
眠らないともたない、肉体のパフォーマンスと呼吸をあわせるように、
肉体をいたわって、慈しみながら、大事にして暮らさないとな。
以降、できるだけ4時間半は眠るようにするし、眠れるときはちゃんと6時間以上眠るようにしている。
おかげさまで記憶は定着したままで、以降深刻なトラブルはない。


眠るって大事。眠る間にいろいろなものを、からだは静かに修復するんだと思う。
たぶん、眠る時間は深い深いしあわせを紡ぐ時間なんだよなぁ。
本当は成長ホルモン(←この名前よくないよなぁ)の出る、夜10時~深夜2時に
眠れたらと思うけど、それは少々ムリがあるので実現していない。
とにもかくにも、睡眠不足をあなどってはいけません。
「そんなに眠る時間がないわよ、もダメ」(ほんとに死んじゃいます。仲のいい友人に、睡眠不足で、文字通り死にかけたのがふたりいます)。
肉体の声に耳を傾けて、その声を聴く。
うまく気づいてあげることがなによりだいじだと思います。

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