産科の医師がいなくなる

2008年8月29日 (金)

産科医に無罪判決。帝王切開での女性死亡事故 福島地裁

/2008年8月21日朝日iモード

今日、検察側が控訴しない方針を決め、裁判は終結。
産婦人科医師の無罪が確定した。
「胎盤を無理にはがした」ことが争点になったが、現状の医療現場では、このような場合にはよくとられる処置(らしい)。
控訴するだけの臨床が見つからないというのが、控訴断念の理由だそうだ。

気の毒な事故だと思うが、正直、これが有罪ならばもう、だれも産科の医師になんてなりたいとは思わないはずだ。
わたしたちは、お産を甘く見過ぎている。
母子ともに健康、は、決して当たり前のことではない。
いつだって危険と背中合わせだ。

今から10年ほど前に、すでに「産科の医師が不足している」状態が始まっていたのを、産婦人科医師の取材を通じて知った。
大病院から産科が消えていく。
医師を志望する人にとって、産科の医師のリスクは高すぎるからだ。
ほんとうは生死と背中合わせのところにいるお産の危険を、世間は認識しない。
ほかの科に比べて、クレームの多さ・深刻さは比較にならない。
診療費は安い(周産期治療の診療費に比べて、不妊治療の診療費の高さはどうだ)。
出産を扱うよりも、不妊を扱うほうが、実入りは多い(儲かる!)、クレームは絶対的に少ない(不妊治療医師は、患者にとっての神様だもの)。
産婦人科を目指す若い医師たちは、産科よりも婦人科へ、そして不妊治療へと流れる。
周産期治療の崩壊だ。

背景には、医療が進歩した日本の、お産の安全神話がある。
確かに、新生児の死亡率は、世界的に見ても非常に低い(日本の産科は優秀なのだ)。

けれど、日本で、お産で死亡する率は、交通事故で死亡するのと、ほぼ同率くらい。

結構な確率じゃないだろうか。危険とはいつも隣り合わせなのだ。
今回の事故が「有罪」になってしまったら、ほんとうにだあれも
産科のなり手がなくなってしまうよ……と思っていた。

もしも自分の身内が……と思うと、身震いせずにはおれないけれど、それでも。
事故は事故にしないと。これを事件にしてはいけないと思った。
そんなことになったら、ほんとうに、今にだれも、産ませてくれなくなるよ。

お産のリスクの数値をわかりやすく書いてある医師のコラムを見つけたので
下に紹介しておこう。

女性の健康・50話:第26話 出産時のリスク
(阪大病院周産期母子医療センター産科病棟医長記事)
/毎日新聞 2007年9月23日 大阪朝刊

 

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